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「滅菌(めっきん)」とは

こんにちは、アメジスト編集部です。今回は、「滅菌」について紹介したいと思います。市販されているガーゼなどにも「滅菌済」などと表記されているものもありますが、どのような意味なのでしょうか。

滅菌とは

有害・無害を問わず対象物に存在しているすべての微生物を殺滅または除去することです。生体を無菌にすることは現実的には難しいので、主に器具などに対しての用語です。

滅菌が必要な器材は?

無菌の組織や血管系に挿入する器材をクリティカルな器材と呼びます。手術用器具、注射器、穿刺器具、縫合器具、循環器または尿路カテーテル、移植埋め込み器具などで、これらは滅菌処理が必要です。

傷口に当てるガーゼ,絆創膏,パッド類なども滅菌処理しているものもあります。

滅菌保証水準について

微生物を限りなくゼロに近づける方法で確率的な概念です。日本薬局方では「微生物の生存する確率が 100万分の1以下になること」をもって、滅菌と定義しています。国際的にも無菌性保証レベル(SAL :Sterility Assurance Level) として、10-6(100万分 の1)が採用されています。 100万分の1の確率は、サマージャンボ宝くじを10枚買ったときの1等が当たる確率で、航空機事故に遭うとされる確率の20万分の1よりも低く、隕石に当たる確率100億分の1よりは高い確率でが、滅菌不良品ができる確率としてはほぼ無いと考えて良いレベルですね。

滅菌の方法は?

無菌性保証レベル10-6を達することの出来る滅菌方法は、加熱による高圧蒸気滅菌・乾熱滅菌、化学作用によるエチレンオキサイドガス滅菌・過酸化水素ガスプラズマ滅菌、電磁波による放射線滅菌・電子線滅菌、分離除去による濾過(ろか)滅菌などの方法があります。

現在、病院では高圧蒸気滅菌・過酸化水素ガスプラズマ滅菌・エチレンオキサイドガス滅菌などが行われます。

産業界では、高圧蒸気滅菌・エチレンオキサイドガス滅菌・放射線滅菌・電子線滅菌などの方法で滅菌します。熱に弱い液体の医薬品などでは濾過(ろか)滅菌を行い無菌充填することがあります。

器材の材質や耐久性、構造、従事者の安全性、経済効率を考えて滅菌方法を選択します。

代表的な滅菌方法の特徴

高圧蒸気滅菌(AC・オートクレーブ・湿熱滅菌)

一定の温度(115~134℃)と圧力の飽和水蒸気(空気が排除され蒸気で満たされた状態)で加熱することにより微生物の蛋白(タンパク)質を変性させて殺滅します。

滅菌処理に要する時間も短いですし、安全で経済的な滅菌方法ですので高温に耐えうる器具の滅菌には幅広く使われております。

特徴

●高温・高圧・高湿度に耐える医療用器材に適応されます。

●短時間で確実な滅菌が可能。

●化学物質を利用しないので残留毒性がなく安全で、環境にやさしく、経済的です。

適用:鋼製小物(金属)、リネン類(布類)、ガラス製品、液体(水、培地、試薬)など

適用外:耐熱性が無いもの、耐水性の無いもの

欠点:高温、高湿度に耐久性が無いものは不可。

 乾熱滅菌

乾燥した空気を190℃~160℃で30分~120分加熱することにより微生物の蛋白質を変性させて殺滅します。

特徴

●水に弱いものの滅菌が可能。

●電源のみで使用可能。

●化学物質を利用しないので残留毒性がなく安全で、環境にやさしく、経済的です。

適用:鋼製小物(金属)、ガラス製品など 。

欠点:高圧蒸気滅菌に比べ、長時間の処理が必要。金属・硝子器具等の高温に耐えるものしか滅菌できません。

 酸化エチレンガス滅菌(EO・ETO・エチレンオキシドガス滅菌)

酸化エチレン(EO)ガスにより微生物を構成する蛋白(タンパク)質を変化させて死滅させます。高圧蒸気滅菌と違い低温で処理出来るため、耐熱性のない器具にも対応出来ます。
 滅菌処理に要する時間が長く、滅菌工程後有害な残留ガス成分の除去処理(エアレーション)にも時間を要します。

特徴

●低温で滅菌処理ができるため加熱による材質の変化が少ない

適用:カテーテル類、プラスチック製品、不織布、ゴム製品など。

適用外:液体、ガスが通りにくい形状のもの、直ぐに使用したいもの。

欠点:滅菌処理・エアレーション時間(ガスの残留毒性が強いため、これらを除去する処理)が長い。高価。作業環境の規制があり、作業者のガス曝露(ばくろ)対策が必要。

低温ガスプラズマ滅菌(過酸化水素低温ガスプラズマ滅菌)

高度の真空状態にした容器内に過酸化水素を噴霧し, これにマイクロ波を照射すると電離したイオン, “過酸化水素ガスプラズマ”が発生します。このプラズマ現象によって, 極めて高い反応性をもつラジカルが産生され、これが微生物を破壊し死滅させます。

特徴

●残留毒性がない。

●短時間で滅菌可能。

●滅菌温度・湿度が低く、適用範囲が広い。

適用:プラスチック製品、ゴム製品、鋼製小物。

適用外:水分や空気を多く含むもの、高真空に耐えられないもの、セルロース製の布・不織布など。

欠点:浸透性が弱い。液体、粉体は滅菌に向かない。高価。

いいかがでしたでしょうか。新型コロナウイルスの話題と関連して「滅菌」というワードを耳にする機会も増えているかと思います。予備知識として本記事が少しでもご参考になれば幸いです。

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