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「エチレンオキサイドガス滅菌(EOG滅菌)」について【滅菌の基礎知識】

滅菌アイキャッチ(紫)

こんにちは。アメジスト編集部です。今回は医療器具・医療ガーゼなどの滅菌でもおこなわれている「エチレンオキサイドガス滅菌」について紹介します。

エチレンオキサイドガス滅菌とは

酸化エチレンガスを用いて微生物を殺滅(さつめつ)する方法で、エチレンオキシドガス滅菌酸化エチレンガス滅菌EOG滅菌ETOガス滅菌などと呼ばれている滅菌法です。湿潤しているものやガスが流通しにくい構造のものには不向きですが、高圧蒸気滅菌などの熱に耐えられないものに選択される滅菌法の一つです。

殺滅作用は、微生物を構成するタンパク質や遺伝子の核酸と酸化エチレンガスが反応しアルキル化することによって、細胞の代謝や増殖を抑制し微生物を死滅させます。

このガスは非常に高い爆発性、引火性があります。そのため通常は引火性を低める目的で炭酸ガスやフレオン(フロン)等の不活性ガスと混合して滅菌に使用しています。      

殺菌力は、濃度、温度、湿度、時間、減圧または加圧条件、分散の均一性などによって変動しますが、滅菌保証レベル(SAL)10ー6(100万個の製品の中に発育可能な菌が付着している製品が1個以下 )を確保するため、科学的に妥当性を検証バリデーション)し設定した滅菌条件にて行います。

この滅菌方法で問題となることは、使用する酸化エチレンガスおよびその二次生成物(エチレンクロルヒドリン等)の毒性です。この毒性成分が製品に付着(残留ガス)することによって間接的に人に有害な作用を及ぼす可能性がありますので、人と接触する医療器材などは、接触する部位,接触する時間によって安全とされる残留ガス量の許容値が定められていますので、基準以下になるように滅菌処理後の残留ガス除去が必要となります。この残留酸化エチレンガス等の除去工程のことをエアレーションと言います。滅菌後の温度が高い方が除去時間は短くなり除去には湿度も必要です。残留ガスは、被滅菌物の素材,形状,包装材料などによって除去のしやすさが異なり、数日~1週間ほどかかるものもあり、滅菌直後の製品は直ぐには使用できません

また、ガスそのものが人体に有害な化学物質(特定化学物質等予防規則の第2類物質)ですから、滅菌作業者が作業環境においてガスに曝露(ばくろ)するリスクを極力減少させることが必要です。そこで作業員の曝露対策として作業室には局所排気装置の設置や、ガス吸着マスク,手袋,ゴーグルなどの防護具を着用します。

1971 年米国で、酸化エチレンガスは変異原性と発癌性のおそれがあるとして使用が禁止されましたが、適当な代替滅菌法がないことから、やむを得ない場合に限り使用が許されているというのが現状です。日本では2001 年5 月より、労働安全衛生法上の作業環境評価基準として、酸化エチレンガスの管理濃度を1ppm 以下とする規制(特定化学物質障害予防規則)が適用され定期的な作業環境測定を実施が必要です。また排出されるガスの環境への配慮からPRTR法規制(特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律)があり排出ガスの処理が必要となります。

滅菌効果に影響する重要な要素

ガス濃度

基本的には、滅菌剤であるエチレンオキシドガス濃度が高いほど効果は高い。ある濃度範囲内では濃度が2倍になると微生物の不活性化速度(殺傷速度)が2倍になる。

湿度

乾燥状態ではエチレンオキシドガスの微生物不活性化作用は無く、水分の存在下でガスの菌体への浸透性が向上し、構成するタンパク質や遺伝子の核酸をアルキル化させる反応時にも水分子が必要です。したがって滅菌には湿度(水分)が必要で、おおよそ50%RHの条件で実施されます。

温度

温度が10℃上昇すると不活性化速度が約2倍になります(たとえば、45℃において滅菌時間が8時間かかるとすると55℃では半分の4時間程で同じ効果が期待できます)。しかし、ガス成分は60℃以上になると重合を起こし滅菌剤として作用しなくなります。したがって、滅菌温度は通常45℃~60℃の範囲で実施されます。

エチレンオキシドガス滅菌においては、大型の滅菌器内の温度・湿度を均一にすること,被滅菌物の中心部の温度を所定温度で制御することは比較的難しい。このため、滅菌器内へ被滅菌物を入れる前にあらかじめ滅菌器内外で滅菌設定温度・湿度にさらし、加温,加湿を実施しておくプレコンディション処理を行うことや、均一性をはかるため滅菌器内に攪拌装置を設け均一にします。

時間

基本的には、滅菌時間が長いほど効果は高い。

分散の均一性

プレコンディショニング処理,攪拌装置などにより「ガス濃度」,「温度」,「湿度」の均一化をはかりますが、被滅菌物の包装や滅菌器内での積載方法により分散性が変わりますので評価が必要です。

管理は難しいが、比較的低温で処理が可能なので有用な滅菌方法です。

●清浄綿、ぬれコットンなどでも実施されている滅菌方法。関連記事「高圧蒸気滅菌(AC滅菌)」について

●殺菌や除菌など、どれも似たような用語ですが、その違いは何なのでしょうか。関連記事「滅菌」・「消毒」・「殺菌」・「除菌」などの違い【用語解説】

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