標準予防策について
こんにちは。アメジスト編集部です。今回は、医療機関などで実施されている標準予防策についてご紹介したいと思います。
感染対策の原則
感染成立の3要因である「①病原体(感染源)」「②感染経路」「③宿主」が揃うことで感染します。感染を成立させないためには、こられの要因のうち一つでも対策を行うのが原則です。
この3要因の対策と、病原体(感染源)を「持ち込まない」「持ち出さない」「拡げない」が基本です。
感染症の原因となる微生物(細菌、ウイルス等)を含んでいるものを病原体(感染源)といい、この可能性があるものは以下のものです。
・血液
・体液(汗は除く)
・分泌物(喀痰等)
・嘔吐物
・排泄物
・創傷(そうしょう)皮膚
・粘膜等(気管、口腔、鼻腔、消化管、眼球、膣等)
これらをまとめて「湿性生体物質」と言います。この湿性生体物質と、これらに触れた手指,これらに触れた器具・器材(注射針、ガーゼ等)は感染原となる可能性があります。
標準予防策とは
米国疾病管理予防センター(CDC)という機関が推奨している病院感染対策の基本的な方法です。CDCのガイドラインが推奨する感染対策は、「標準予防策」と「感染経路別予防策」の2段構えになっています。
標準予防策の考え方
「患者の血液・体液や患者から分泌排泄されるすべての湿性生体物質は感染症のおそれがある」とみなして対応する。
対象
感染症を発症している患者さん限らず「全ての患者」が対象。
具体的方法
①手指衛生の励行(5つのタイミング)
②手袋、エプロンなど個人防護具を着用する
③咳エチケットを行う
④環境整備(日常及び定期的な清掃)
⑤ケアに用いられる器具の管理
⑥患者さんの身の回りの品の管理
標準予防策の具体的な方法
手指衛生の励行(5つのタイミング)
・手指衛生は、医療関連感染対策の基本
・手指衛生は、「適切なタイミング」で、「適切に行う」ことが重要
・手指衛生が必要な5つのタイミング
1)患者に接する前
2)無菌的処置を行う前
3)体液曝露の可能性があった後
4)患者に接した後
5)患者周囲環境に接した後
患者さんから医療従事者,医療従事者から患者さんに病原体を拡げないためにこれらのタイミングでの手洗いは重要です。
手袋、エプロンなど個人防護具(personal protective equipment:PPE)を着用する
個人防護具とは、医療従事者が着用する手袋,エプロンor ガウン,マスク,ゴーグルorフェイスシールドなどです。
目の前の患者さんの湿性生体物質が・・・
手に触るかも:手袋
体に触れるかも:エプロンor ガウン
鼻・口に入るかも:マスク
目に入るかも:ゴーグルorフェイスシールド
を着用します。
曝露(ばくろ)されると予測される身体の箇所を守れるPPEを選び、医療従事者を病原体の曝露から守り、病原体の拡散を防ぎます。
※暴露(ばくろ)…問題となる因子(この場合、ウイルス、細菌など)に特定の集団または個人がさらされること。
咳エチケットを行う
2003 年に、世界各国でアウトブレイクが見られたSARS(重症急性呼吸器症候群)において、未知の病原体による医療従事者の多くの感染事例が大きな問題となったことを踏まえ、標準予防策の一部として呼吸器衛生/ 咳エチケットが追加されました。新型コロナウイルス対策でも咳エチケットは重要ですね。
この対策は、咳などを有する伝播性の呼吸器感染症を介した感染を低減させる目的で、ポスターの掲示を含めた患者・面会者に対する教育・啓発、咳などの呼吸器感染症状を有する患者さんは、咳やくしゃみの際には口や鼻を覆い、気道分泌物に手が触れた際には手洗いを行い、医療施設は、手洗い設備やごみ箱などを整備します。咳などの呼吸器感染症状を有する患者さんにマスクを着用してもらい、可能であれば、離れた場所に待機させます。医療従事者は、咳などの呼吸器感染症状を有する患者さんに対応する際には、マスクを着用するなどの対策を病原体検出前に行うことで、確実な感染対策の実施を行うこととしています。
環境整備(日常及び定期的な清掃)
多剤耐性菌をはじめとする院内感染対策において,環境管理の重要性が再認識されています。医療環境へ一度菌が付着してしまうと,長期にわたって環境に生存することがわかっています。そのため,病室の環境整備や日常清掃は感染対策の一部であると認識されています。とくに,医療者・患者の手がよく触れる場所を「頻回接触部位」と呼び,環境整備の際は重点的に清浄化に努めることが重要です。
ケアに用いられる器具の管理
患者さんに使用した医療器具および機器は、機器・機材の種類,用途に応じ適切に処理(洗浄・消毒・滅菌)を行います。
患者さんの身の回りの品の管理
シーツ,布団カバー,枕カバーなどの寝具、患者着、タオル・おしぼりなどをリネン類と言います。清潔なリネン類の管理は患者さんの快適性のみならず、様々な感染症に対する予防の観点からも重要ですし使用後のリネンも適切な処理が必要です。
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