1. HOME
  2. トピックス
  3. 取り組み
  4. 再度のベトナム市場挑戦

TOPICS

トピックス

ベトナムアイキャッチ
取り組み

再度のベトナム市場挑戦

関連会社Amethyst Medical Vietnam Co.,Ltd.での取り組み

品質の高い人工透析の普及に向けてベトナム市場を創る大衛

2010年代に一度目の現地法人立ち上げも撤退

日本国内での産科・医療領域の事業を推し進めてきた大衛ですが、実は2010年代前半からベトナムの医療機関と連携し、現地医療の発展に貢献してきました。

ただ、その道は平坦なものではありませんでした。当初は産科領域でJICA(独立行政法人 国際協力機構)による民間委託事業の委託先として2回も採択されるなど、滑り出しは順調そのもの。その後はその経験も踏まえて分娩や帝王切開に使う医療機器一式を製造販売する現地法人を立ち上げ、ベトナムに本格的な進出を図ったのは2015年のことでした。

しかし、いざ進出してみると大きな壁に直面します。現地の医療水準が想定していたよりも低く、日本式の「安全安心なお産」は現地の所得水準ではまだまだ高級品であることがわかったのです。つまりそれは、医療機器の品質マネジメントシステムを備えた高品質な製造設備を現地で整え、製造販売を行っても、事業として採算を取ることは難しいということ。大衛は、現地での製造をいったん白紙に戻すことになったのです。

「現地の医療の質をあげる」ことが先決という判断

2020年、大衛は心機一転、戦略を変更して「アメジストメディカルベトナム」を立ち上げることを決定します。社長の加藤は当時の戦略変更についてこう語ります。

(加藤)「国内事業ではお産だけではなくてもっと幅広い医療メーカーを目指すという戦略が明確になってきたので、今回のベトナム進出でも、お産領域にこだわることなく医療品全般の取り扱いを目指すことにしました。ベトナムの人口は約1億人で出生数に関しては既に日本を上回っています。長期的に見ると人口増と経済成長によって日本と同程度のマーケットになっていく可能性もありますし、ベトナムという医療の発展がそこまで進んでいない国であれば、我々のような中堅メーカーにもまだまだ勝ち目があると想いました。」加藤社長

そこで、今回加藤は、ベトナムの市場環境をしっかりと把握することから始めました。その結果わかったのは、医療の質の問題と、市場参入の難しさでした。まず、ベトナムには現地の医療品メーカーがほぼ皆無であり、ほぼすべてを輸入に頼っている状況です。また、社会主義国家として国民の健康に対する予算が定められており、医療の質は産科領域に限らず、全体的に低いことがわかりました。

次に、市場への新規参入ですが、2016年頃から医療機器製造許可や輸入許可の規制が整備され始めています。しかし、運用上の問題が多発することから毎年改定が行われるため、現地医療機器メーカーや輸入業者も制度を正しく理解することは困難を極めます。

(加藤)「製造販売についてだけではなく、公立病院の入札の仕組みも頻繁に変わるなど、海外展開に慣れていない日本メーカーにとっては、ベトナム市場での事業展開は非常に難易度が高いと聞きました。タイなど東南アジアの他の国には展開できていても、ベトナムでの展開には苦戦している企業が多数あることもわかりました。」

そのような市場環境の中、アメジストメディカルベトナムは大きな決断を下します。医療の遅れを目の当たりにしたことから、大衛の製品を販売することのみにこだわるのではなく、まずは品質の良い医療品をベトナムに紹介して販売していくことで、ベトナムの医療全体の質の向上を優先することにしたのです。

(加藤)「大衛の製品の多くはいわゆる『衛生材』です。これらはもちろん医療の質を高めるために重要なものではありますが、胃ろうや人工透析など、命に関わるものがベトナムではまだまだ足りていない現状があります。ですので、まずはそちらから取り組むべきだと感じたのです。特に大きな課題になっていたのは、人工透析装置です。現在、ベトナムでは人工透析患者は3万人に対して設置されている透析装置が5000台と言われており、あと5000台あっても足りないとされています。そこで、日本の透析装置やその装置と一緒に使う血液ろ過装置(ダイアライザー)やその他の部材をベトナムに広げようと考えました。」

透析装置の販売経験ゼロからメーカーに粘り強く交渉

人工透析装置と関連する部材のベトナム展開を目指すことを決めたものの、そこにも大きな課題が2つありました。

1つ目は、人工透析の装置や装置につけて使う消耗品などは、それぞれメーカーが異なること。そのため、全てのメーカーに個別に連絡し、ベトナムでの販売権を認めてもらう必要がありました。

(加藤)「私は以前大学院で製薬の研究をしており、その時の友人が医療機器メーカーに多く勤めています。また前職である商社のつながりで、各所にそれなりにネットワークがあります。透析装置のメーカーさんには私からコンタクトし、ベトナムで販売させてもらえないだろうかという打診をしました。」

2つ目の課題は、大衛は組み合わせ医療機器の分野で高度管理医療機器を含む医療機器の製造販売会社ではあるものの、透析装置の販売取扱いの経験がなかったこと。

(加藤)「最初は大衛が本当に透析領域を手掛けられるのか?という目で見られていたと思いますね。」

と加藤は振り返ります。しかし、加藤をはじめとしたメンバーは諦めずに粘り強く交渉を続けました。現地で医療機器についての知見があるパートナーを集め、結果的に医療機器メーカーにベトナムでの販売権利を認めてもらうことができたのです。

ついに2021年から、通常ではあり得ない形で、アメジストベトナムが透析装置とその他消耗品を扱い、ベトナムで展開することが可能になりました。また、ベトナムでの営業活動では、正しい方法や品質の高い消耗品を使った人工透析について地道に啓発活動を行いました。その結果、2023年現在、既に100台近くが現地で導入されており、今後もさらなる増加が見込まれています。また、この他にも胃にチューブで直接栄養を届ける胃ろうを造設するためのキットや生化学分析装置、マイクロカテーテル、サージカルテープなども現地での販売を開始しています。

医療関係者との信頼関係を構築し、ベトナムの医療に貢献

加藤に今後の豊富や成し遂げたいことを語ってもらいました。

(加藤)「将来的にはもちろん日本で販売している大衛の製品をベトナム国内で広く使ってもらいたいと考えています。ただ、そのためにはまずはその下地を整えることが重要です。ベトナムでは、医療全体がまだまだ未熟です。許認可に関する制度面が未成熟なことに加えて、特に人工透析については、先進国では当たり前である人工透析だけを専門に行う『人工透析センター』を民間の機関が設立することが現在は法律で禁じられています。なので、患者さんは病院で人工透析をせざると得ないのですが、キャパシティが全く足りていない状況です。1日約100人の人が人工透析を適切に受けられずに亡くなるとも言われています。そこで、今は機器の販売に加えて、人工透析ができる機関をもっと増やすためのロビイング活動を、現地のドクターや関係組織と一緒に行っています。これによって、もちろんビジネスもプラスになりますし、ベトナムの人の健康状態をもっとよくしていくことに貢献していきたいです。

ビジネス面でも大きなチャンスがあると考えています。ベトナム市場は特色があり、現地の医師の声がとても強いのです。日本であれば『皆これを使っているから』という理由で導入される医療品が決まったりしますが、ベトナムでは医師が気に入ってくれれば、メーカーの規模や知名度ではなく導入してもらうことができます。もちろん今ベトナムにはいわゆるグローバルメーカーも含めて、名だたる企業が参入してきています。ですが、国内でやってきたのと同様に、しっかり医療機関やそこにいる医師と関係を構築していくことで、我々の規模の会社でも、ベトナム市場で大きなシェアを取ることも夢ではありません。現在大きく伸ばしている透析・生化学分析装置に限らず、現地で求められている医療機器の取り扱い品目の拡充は、ぜひ志を高く持って頑張っていきたいですね。」

ベトナムでの大衛の挑戦はまだまだ始まったばかりです。急成長をとげるアメジストメディカルベトナムは、自社だけではなく日本国内の医療機器メーカーや、ベトナムの医療機関、ドクターなどを巻き込みながら、ベトナムの医療改善に本気で取り組んでいます。